Rhynie Chert-ライニーチャート-

それでもこの世界は美しい

2年間お世話になったバイト先に贈った手紙

僕は2022年3月から2024年3月までの丸2年間、お世話になったバイト先がある。

このバイト先では本当に色んなことを学んだ。

このバイト先を起点にして、僕はここで働くことがなければ解消しなかったであろう更に過去の自分のトラウマやコンプレックスを一部和らげることができた。これは感謝してもしきれない。

僕の記憶が風化する前に、このブログにそこでのエピソードを色々今後書いていきたいと思っているがまず初めに僕がこのバイト先を辞める時に書いた手紙があるので、個人情報などを少しふせてほぼ原文のままの残しておこうとおもう。

(以下、内容)

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お店の皆様、中山です。これで最後になるので、僕がこのお店で働いた二年間で感じた気持ちを残したいと思います。昨今、急速に人工知能が発達し、AI も人間も区別が無くなる時代の到来が近いと言われています。遺伝子操作や量子コンピュータと言った新時代の技術で、見た目が 人間と全く変わらず、感情まで持ち合わせていながら実はロボットという存在と社会が共存する 時代の到来ももうすぐだと僕は確信しています。

すると、人間と人間以外のものの境界がどんどん曖昧になり、何が人にあり、何が人に非ずなのかという議論に社会は向き合わなければならなくなることが予想されます。人とは何かという問いに、このお店で 2 年間働いたことが一つのヒントを与えてくれました。

毎朝Aさんという足の不自由な方がコーヒーを飲みに足を運んでくださいます。とても腰の低い方で、コーヒーを注文するときも、おかわりをするときも、何度も「ごめんね、ごめんね」とこ ちらに伝えてくれます。あそこまでお年を召されて、はるかに年下の僕に対してもあんなに謙虚 に接してくださるAさんの姿勢には胸にくるものがありました。こちらは何も謝られるようなことはしていないのにAさんがなぜいつも「ごめんね」と謝るのか。それはAさんなりに僕ら従業員の立場に立って考えてくれての気遣いであり、想像力であると思いました。 また、足の不自由なお客様や子連れの方に「お席までお持ちしますね」と嫌な顔一つせず食べ物を運ぶここの従業員の方々にも僕は心を打たれました。それも従業員の方々がお客様の立場になって行動をしていることへの感動でした。 片や、稀にですが「急いでるんで早くしてもらっていいですか!」と乱暴に捲し立ててくる来店者の方もいます。この違いはどこから来るのか、それは心であると思います。

心とは、自分以外の他者に対して、その人の立場になって考えてみるという想像力と、それを元手に自ら働きかける行動力であると思います。これらから、僕は人であるかないかはそこに心があるかどうかで決まると強く確信しました。たとえ人の見た目をして、人間を越える圧倒的な計算・ 処理をできる存在が誕生しようとも、その存在体に心がなければ到底人とは考えることはできな いと。

心のない人に心を配ると、配ったこちらの心が消耗し、傷ついてしまいます。ですが、心のある 人に心を配ると、相手もそれをわかってくれて、心を配り返してくれます。すると、それによってお互いに心を満たし合うことができます。人は切られる痛みを知らないと、平気で他人に刃を向けてしまいます。昨今のニュースで聞く、福祉施設・医療施設・教育現場といったところでの悲しい事件や事故は働かれている従業員の方々のケアがないことで起こっていることも多いと感じますし、僕自身も時には来店される方の心無い言動に傷つき痛みを感じることもありました。その中でも支えとなったのは紛れもなくこのお店で働く仲間でした。この店のスタッフの方と働いていると、どんなに出勤前に元気がなくても自然に元気になれました。

僕が所属している大学は、未来の技術者・研究者・学校教員を養成する学校ですが、そこでは道 徳教育も倫理教育も行われておらず、心のない学生も多いです。大学 2 年の時、大学で耐え難い苦痛を味わい通学が毎日嫌だった時、毎日のようにここに出勤して働いていました。ここで働くだけで、心が軽くなっていました。ここで働いていなければ、僕はあの苦しかった 1 年間を乗り越えることができなかったと思います。この店で働くことそのものが僕にとっての、外の世界でできた傷をケアできる最高の環境でした。

物質的な豊かさとは違う豊かさがこれからの時代には求められているように感じます。僕にとっ てのそれは心の豊かさです。どんな時でも余裕を持って人に接し、時に相手の立場になり人を許 すこと、他者の過ちを受け入れること、自分の過ちに心から反省し改善を試みること。このよう な人としての美しき態度をここで学びました。 このお店に関わるすべての方々に感謝しています。 僕はこのお店で沢山のものを与えていただきました。だからこそ次は自分が与えられる側の人間になることを目指します。本当にお世話になりました。

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僕を支えてくれた場所である東京理科大学、しかしここでさえ、ある時期は僕にとってのストレスの場所だった。そのことについても詳しく書いていく予定であるが、その時期に僕を支えてくれたのは間違えなくここのバイト先だった。

 

今でも感謝している。ここまで読んでくれてありがとう。